腐男子炭「善逸が炭善の快楽堕ちエロ小説書いてた…」

「やっぱり快楽堕ちさせるんじゃないか!」
 俺は思わず突っ込んだ。快楽堕ちじゃないとは一体……? これはほぼ快楽堕ちエンドなのでは???
 困惑する俺に、善逸は本気で驚いた匂いをさせながら声を上げる。
「えっ、まだ堕ちてないよ?」
「まだ!? やっぱり最後は堕とす気なんだろう! あと俺がまるで悪役みたいだぞ!?」
「でもまだ堕ちてないからセーフ! セーフだろ! あと、今回はドSな性癖を元々持っていたけれど今までは耐えていた炭治郎が、別れを告げられたことで箍が外れちゃっただけだからセーフ!」
「アウトだろう!」
「続編でらぶらぶになるからセーフだ!」
 強く言われると、なんだかそんな気もしてくる。俺はもしかして、善逸の口車に乗せられているのではないか。いや、でも善逸は本気でセーフだと思っているみたいだし……セーフなのか……?

「それに、考えてもみてよ。もし炭治郎がこんな感じで別れを告げられたら、説得するでしょ?」
「それは当然だろう! 互いに好いているのに、こんな理由で別れる気はない!」
 嫌われてしまったのならともかく(それでも簡単に諦める気はないが)、俺のために別れるなんて納得できない。そのあたりは、俺は俺に感情移入することができたんだ。そこまでは。
「だから、心を取り戻すために体を開発するんだよ!」
「いや待て、それはおかしい! あと、その、一方的な性行為は、よくないぞ!」
「そりゃ現実だったらね。でも、これフィクションだからな~。それに、この話の炭善は恋人同士だし、説得方法は決めてないからルール無用だし、実質合意の上と言っても過言じゃないし……。最終的に俺は考えを変えて炭治郎のお嫁さん(オナホ)になるから、とどのつまりハッピーエンドだよ!」
 善逸が早口で畳みかけてくるので、俺はまたしても「そう言われればそうだな」と思いかけたが、はっとした。結局オナホじゃないか!
「いや、お嫁さん(オナホ)ってなんだ……? オナホいらなくないか?」
 そう何気なく口にすると、善逸は怒った。
「はあ!? いるよ! いりまくるよ! 炭治郎が俺をオナホ(と書いて恋人と読む)にするための話なんだぞ!? カレーライスからカレーを抜く気か!?」
「そんな重要な要素なのか!?」
「重要だよ! オナホ要素を抜いたらシリアス炭善になっちゃうだろ!」
 そういえば、作中の俺がオナホとか言いださなければ、シリアスになりそうだった気がする。
「シリアスでよくないか? 確かに、シリアス展開は読んでいてちょっと辛いこともあるが、俺は長男だから耐えられるぞ!」
「お前が耐えられるかどうかは関係ねえ! 俺はある時愛あるオナホ作品を読んでこう思ったんだ……炭善でもやりたい、と……! それまでモブレのヤリ捨てネタや、鬼畜攻めの愛なしネタばかりだった俺は、愛ゆえに相手をオナホにしていちゃらぶするという思想に衝撃を受けたんだ! だから、お前が俺をオナホにするんだよッ!」
「そ……そうか……」
 あまりの剣幕に呑まれ、俺はただ頷いた。善逸のエロトークは止まることなく続いた。

2020.05.01
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